「モダンタイムス」


伊坂幸太郎の新作。


これを低評価してる人が結構いるけど、そういう人は今までの伊坂作品に囚われすぎてるんじゃないかな。これは実は今までの伊坂作品とは毛色が若干違う。




俺の感想はネタバレにつき以下に白文字で。




人は大きな力に逆らえない、物事はなるようにしかならない、人々の日常の些細な行動は全て因果関係を持っている、ってのは伊坂さんの一貫した人生観。この作品もその主張の延長。


大きな敵には逆らえないと一旦は抵抗を諦める主人公だが、「小さなことでもできることをやる」と最後に決死の反撃を試みる。それでも変わらない「システム」。


絶望、虚無に包まれかける主人公の心を救うのはいつも隣にいる妻、佳代子。




佳代子の口から出る「愛してる」って言葉はこの作品の中で一番重く、深い言葉だ。




システムの中で生きる自分達の儚さに絶望しそうになるけど、でも人間には愛がある。自分の手を握ってくれる誰かがそばにいてくれる。それだけで十分じゃないか。




「ALL YOU NEED IS LOVE」




伊坂作品には何度か出てくるジョン・レノンの言葉。




現代社会への警鐘とか、どんでん返しとか、息詰まるストーリー展開とか、ハッピーエンドとか。


そんなのを狙った作品じゃないと思うな。




俺は大満足だった。